浮気の善悪

浮気をした男は絶対に相方を悪く言わない。
浮気した俺が悪いんであって
お前は悪くないって。

だから浮気をした方が悪くて
された方は被害者にしかならない。

でも、物事の善悪はそんなに単純じゃない。

浮気をされる方に原因がないなんて事あるんだろうか?
いいえ、かならず原因はあると思う。

あたしは自分が実際に失敗した例。

セックスレスになって関係がダメになった。

浮気の定義がセックスだとするなら
夫婦のセックスに不満が無くて浮気なんてするだろうか?

奥さんとのセックスが最高に気持ちよかったら
ほかの女としたいと思うだろうか?


夫婦関係はセックスがうまくいってたら
すべてうまくいくと思う。

どんなことがあっても
大きな喧嘩をしても
セックスしてたら愛情は続いていく。

奥さんの一番大事なお仕事は
男の本能のコントロールなんだと思う。

よく、男はマグロな女は嫌いだと言う。
でも恥じらいの無い女も嫌いなもの。

両立させるのはすごく難しい。

でも、演技してあげなきゃいけない部分なんだ。
別に恥ずかしくない事も
恥ずかしがってあげればいい。

アリシア・キースが歌ってる。
これで会うのが最後みたいに抱きしめてって
間違ってるよ。そんなの。

いつだって初めてみたいに愛し合う方がずっといい。
恥ずかしくても衝動が抑えられない
あの初めての気持ちを大事にすべきなんだ。

夫婦はすべてをさらけ出しあって愛し合ってはいけない。
家族になってしまうから。

結局あたしは自分のすべてをさらけ出して
恥じらいを失い口でしてあげてればマグロじゃないと思ってたけど
どっかでセックスしてあげてるように思ってた。
その気持ちがマグロだったんだ。

一緒に夜寝ないなら、セックスしてあげない。
そんな風に制限をつけて、ごほうびみたいにしてた。

それじゃぁ情熱なんて消えてなくなる。

逆だったんだ。

したくてたまらないから一緒に寝たがるように
仕向けてあげなきゃいけなかったんだ。

かわいがってもらう事は権利として主張しても
そんなのほしいものになんかならない。

夫が妻をかわいがりたくて仕方がないように
もっていってあげなきゃいけなかったんだ。

毎回のセックスが新鮮で官能的であり続けなきゃいけない。
がんがん攻める事だけが官能的である事じゃない。
その気にさせるのがお互いに一番大事な事だったんだね。

いつだって体の手入れが行き届いてなきゃいけない。
男ってどんなに仕事で疲れていても
寝不足でもセックスだけはホントは別腹なモノ。
睡眠時間が減ってでもしたくてたまらない時はしちゃうし
次の日しんどくても、それで後悔なんてしない。
義務のセックスはできなくても
衝動のセックスはどんな時でもできるもの。

疲れてるならマッサージからはじめればいい。
したくてたまらなくなるように
ゆるーく、やさしく、微笑みながら
たくさんのキスを降り注いで
ぬくぬく甘い愛情を言葉じゃなくて
肌から伝わるくらいに撫でてあげたらいい。

動物は言葉なんて通じない。
だから撫でて伝えるんだ。

人間だってホントの愛情は
肌からしか伝わらないんだ。

男の人はいつだって戦ってる。
一生戦い続けなきゃならないってプレッシャーを背負ってる。
だから、女の人は癒してあげなきゃいけないんだ。

獰猛なタイガーもあたしの腕の中では子猫になる。
でも、ねぇ、あたしもたまには子猫みたいにかわいがって。

こんな風にお互いが気持ちよくてたまらないのに
ほかの女の子があたしよりも良く見える?

ほかの女の子としても、こんなに気持ちよくなんか無いんだから。
そう言うと、知ってるって笑うから
あたしは不安になったりしないよ。
あたしが一番気持ちよくしてあげれるよって
自信があたしを心配事から救ってくれる。

禁断の果実

いつだって誕生日前はアンニュイな気持ちになる
もううきうきした気持ちで誕生日を迎えられる歳じゃない。
先の事を考えずに進めるのなら
あたしはきっとずっと彼のそばにいたい。

あたしがもっと若かったなら
もしまだ二十歳そこそこの歳だったなら
きっと彼のそばに居続けた。
でも、そうなら彼にも出会ってない。
結婚してアメリカに来て
そうして彼に出会ったから
もしもなんてありえない。

何をしていたって頭から離れない。
あのあたしを呼ぶ甘い声や
あたしを愛しそうになでる指先のリズム
唇を重ねた後に少しだけ上がる口角が
あたしの記憶から離れそうにもない

もしも後悔するとしても
あたしはあの人のそばを離れたくない。
ワガママでもいいよ。
まじめじゃなくてもいいよ。

それでも男と女として惹かれ合い続けられるなら
あたしはあの人の背中を追い続けたい。

たぶん、それが本音なんだ。

だけど鏡の中のクレバーなあたしが
未来をまじめに考えなさいと叱るから
あたしは小さな子供のように
しゅんとして辛い決断を迫られる。
彼に無理やりに未来を押し付けてみる
答えが得られないならさようなら
そんな脅しを突きつける

ひょっとしてって甘い期待を打ち消す
そんな人じゃないって知ってる
彼は女のために生き方を曲げたりしない

彼はきっとこれからも自由を求め続ける

だから自分に言い聞かせるの
答えを待つ間は心の準備
覚悟を決めなさい。
これで終わりなんだから。

胸が痛くて眠れなくても
眠くてぼんやりした視界の中
彼の姿だけ浮かび上がっていようと
仕事をするだけ。
彼との朝はもう来ない。

素敵な男の子とデートをして
気持ちを切り替えようとしてみても
考えるのは彼の事ばかり。

まるでピントが合わないレンズのように
デート相手の顔さえろくに見れず
ピントを合わせれば彼の顔しか思い浮かばない。

夫が復縁を願ってる事知ってても
あたしの気持ちは揺らがない。
彼が好きで仕方が無い。

それでも幸せにならない道を突き進める程
あたしはもう若くもなく強くもない

未練はきっと尽きないけど
それでもあたしは
前に進む事しかできないから
振り切れる事を信じて
ただ強くこの決断に身を任せるしか
答えを出す方法は無いんだよね

恋しさに心が折れてしまわないように
まだ見ぬ子供の顔を思い浮かべる
だけどその子が彼と同じ目で見つめるから
あたしの細胞が彼の子を欲してる事否定できなくて
ひどく屈折した自分の願望を思い知らされる
あの人の子供を安定した人と育てたいなんて
悪魔のようなあたしのどす黒い欲望を
いつか清らかに正しい道へと導く事が出来るだろうか

幸せへの道はどうしてこんなにも
胸が砕かれるように苦しくて険しいんだろう。
まるで禁断の果実のように
何を犠牲にしてでも手を伸ばさずにはいれないのに
苦労して手に入れたとしても
ひとかけらでも口にすれば地に落とされる事も
知っているのにそれでも求めずにはいられない

あのとき手を伸ばしさえしなければ
逆に幸せなのかもしれなかったのにと気づくのは
いつだって地に落ちた後

体の記憶13 完結

そんな時、和也に出会った。
彼とは一目惚れだった。
初めて出会った瞬間恋に落ちた。

当時アルバイトしていたレストランに
彼は配達の運転手兼営業として来てた。

初めて会った日、彼は急いで他の配達を終えて
あたしの働くレストランに客として戻ってきた。

でも、話しかける事も話しかけられる事もなく
あたしは夫の迎えが来て帰った。

何度も仕事で会うのに
話すチャンスは見つからなくて
彼が来る度にあたしの心臓は脈打ってた。

夫との関係は何度も話し合い
修復の努力は続けていたものの
彼への気持ちを確認してダメだと思った。
夫との関係から逃げるためなんかじゃなくて
本当に純粋に男として惹かれてる事を認めて
もう、本当に終わっているのだと悟った。

あたしは、その事を夫に告げた。
もう、ダメだと思う。
他の人を素敵だと思うようになった。
離婚したいと告げた。

家庭内別居から始め
本当の別居のための準備を始めた。
運転免許を持っていなかったあたしは
車に乗れなければ生活出来無いアメリカで
一人で暮らして行くための準備に半年掛かった。
その頃にマネージャーになり
仕事も収入も安定した事も
あたしにとって後押しとなった。

何度も目が合って
仕事で和也に会うたびに
和也も同じ気持ちでいる事に気付いてた。
一瞬だけ二人きりになるチャンスがあって
声を掛けられた。
名前を聞かれてデートしてくださいと言われて
電話番号を教えた。

電話を貰った時
すぐに結婚している事を告げた。
騙したりしたくなかった。
それでも一度でいいから会ってほしいと言われたことが
嬉しくて、会いたくてたまらなかった。

正直、乗り換え相手のようには考えてなかった。
学歴もない収入もない仕事もろくなものじゃない。
そんな男に何を望めただろう。
顔がいいだけのいい加減な男。
そんな印象だった。
でも、恋に落ちる時は理由なんかない。
先がない事わかっていても
夫との結婚生活に疲れていたし
不倫した結果からも乗り換えを探してもダメだって
解ってたあたしにとって
先のない相手こそ十分な相手だった。

夫からあたしを奪おうなんて男だったら
きっとあたしは付き合おうと思わなかった。
まだまだビザの関係や両親の猛反対から
正式な離婚には時間が掛かる事
わかりきっていたし
なによりも、そういう深い関係に疲れてた。

それにしても和也は不思議な人で
つかみどころがなく
気持ちが見えないようなところがあるのに
男として魅力的だった。
女の扱いを知ってた。
慣れてるのだと思ったけど
経験人数は意外なほどに少なくて
まじめで硬派な所がある人だった。

最初は本質を見抜けずに
誤解してばかりいた。

遊ばれてるのかもしれないと思ったし
傷つく事が怖くて本気にならないように
深入りしないように
心にプロテクトをかけながら
関係を始めていった。

だけど和也は脱がせるのが天才的に巧い。
抱きしめられて撫でられているうちに
いつの間にか脱がされてる。
そしていつの間にかあたしの脚の間は
受け入れる準備が整ってる。
何一つ気の利いたことを言うわけでもなく
あくまでも自然にいつのまにかその気にさせられる。

心のプロテクターもそうだった。
時間をかけてゆっくりと
少しずつ、気付いたら脱がされて
すっかりあたしは彼の全てを受け入れてた。
不満だったはずの事も
いつの間にか大きな問題じゃなくなっていて
夫にだったら怒っていた事が
自然と許して受け入れられる事になってる。

そんな風に彼の本当の人柄や
誠実さが解ってきた。

無口で何一つ語らない彼を
本当に理解するのにはとても時間が掛かった。
少しずつ、謎が解ける度に
彼の事を知るたびにゆっくりと好きになっていった。

和也は誰がみても男前だと思う。
それこそ俳優のような端整な顔立ちで
あたしは今でも見るたびに一目惚れした瞬間を思い出す。

だからきっと知るたびに幻滅していくと思ってた。
ところが、知るたびに惹かれていく。
彼が格好良いのは、その見た目ではなく
その美学なのだと思い知らされるから。
言葉で語らない彼の生き方は
彼なりの価値観という美学に象られていて
あたしへの気持ちの為に浮気しないんじゃない
きっと彼は自分の美学の為に浮気しないだろう。
そういう人だからこそ、あたしは信じてついていける。

あたしの脳みその低能さを改めて思い知らされた。
脳みそで選び取った男はふたを開ければ幻滅して行き
身体が求めた男とはケンカひとつしない。
やっぱりあたしの身体は脳みそよりも正しいようだ。

本能に耳を澄ませ
煩悩や欲を解き放ち
カラダにとって大切な事、必要な事に忠実に突き進む
そうして選び取った最低限のモノが
いつだってあたしを必要な所へと導く。

体の記憶はいつだって正しいのだから。


おわり。

体の記憶12 結婚生活編

あたしと結婚する為に
夫は両親のコネで入っていた会社を辞めた。
夫の両親の反対を押し切って結婚する以上
彼等の加護の下にはいれないという判断だった。
残る事も出来たけど、意地もあったのだと思う。
あたしの実家に住み、かねてから二人の夢であった
渡米を目指す事にした。

ところが、仕事をやめて実家に住み始めてから
夫は一向に仕事を探さない。
もともとおぼっちゃん育ちでのんびりした性格の彼には
そういうバイタリティは無かったのだと思う。

その当時在宅で仕事をしていたあたしの脇で
朝から晩まで遊びほうけている彼に
正直不安は尽きなかった。
それでも、あたしのせいで仕事を辞めたという負い目から
何も言えないまま、3ヶ月が過ぎた。

両親もアメリカに行きたいのなら
寿司職人になったら?などと薦めた。

結婚を決めた当時はアメリカの大学を卒業していると
聞いていたのに、結婚直前になって打ち明けられたのは
卒業していなかった事実で
学歴と結婚するわけじゃなくても
7年もアメリカに居て、遊びほうけていた青春時代に
正直戸惑いは隠せなかった。
そういう弱さは結婚してからの生活に支障はきたしていたと思う。

学歴もない彼とアメリカに行くには
寿司職人になるというのは一番近道に思えた。
最初は戸惑っていた彼もさすがに
マスオさん状態で3ヶ月も生活していたら
後がないと感じたらしく寿司職人を目指す事になり
無事就職が決まった。

道が定まってからの彼はすごく努力したと思う。
きっと彼の人生の中であんなにも苦労したのは
あの時期だったと思うほどに
朝から晩まで働きづめで
夫婦二人で目標に向かって突き進み
あたしたちはとてもうまくいってたと思う。

それから、1年過ぎた頃、日本の理不尽な会社の形態に
あたしたちはどうしても納得出来無い出来事が起こり
彼は仕事を辞める事になった。
あたしももちろん同意の上だった。
寿司屋さんはそこだけではなかったし
他にもいくらでも仕事はあると思えたからだ。

でも、実際にはまた彼の就職活動は難航した。
仕事が無かったのではない。
探さないのだ。

あたしのストレスは今度こそぎりぎりだった。

そんな時に、あたしの父親の知り合いの紹介で
アメリカにレストランを経営しているという人に出会った。
そこから渡米の話しはとんとん拍子に進み
その次の就職はアメリカでとなったものの
あたしは出発直前まで仕事をしながら
一人で渡米の準備をした。

ビザの事、手続きもろもろや荷造り。
彼は相変わらず遊びほうけ
あたしは一人でストレスを抱えて
本当に先行きは不安でたまらなかった。
それでも、あんな想いで結婚した相手だったし
一生ついていくと決めたのだから
一緒にやっていこうと
話し合いを重ね、少しでも彼にも仕事を分担する。
ところが、結局尻拭いが必要になり
あまり手伝いにならない彼の仕事の能力の無さに
肉体労働に進んで正解だったと改めて思った。

両親に相談すると、得意不得意が人にはあるのだから
夫に足りないと思う要素は自分が足せばいいと
なだめられたが、引っ張って行ってくれる人を
どこかで求めていたあたしにとって
頼りない夫は尊敬の対象から外れていった。

主従関係で成り立っていたセックスは崩壊して
彼とのセックスはすれ違っていった。
心から尊敬出来無いご主人様
そんな関係に主従関係など存在していられるはずもなく
この頃から次第にセックスレスになり始めた。

それでも、夫を支えたいと思う一心と
一つしか年上じゃないのだから
男は成長が遅いからと、自分に言い聞かせて
サポートをするというよりも
あたしが引っ張っていこうと決意した。

なんとかアメリカに到着した時には
あたしはへとへとだった。
それでも着いた翌々日から仕事は始まり
到着日から体調を崩してしまっていたあたしは
仕事に出る事が出来なかった。

マネージャー候補として来たものの
まだ若く経験もないあたしは
彼と同じレストランでウェイトレスから始まった。
寿司シェフとウェイトレスとして
仕事場と家、24時間一緒に過ごすのは
どんなに愛し合う男女でも難しい。

夫と同じだけの時間仕事をして
家では夫の世話をする。
それまでも無職でありながら
家の事ひとつ出来無い夫は
少しずつあたしの重荷になっていってた。

あんな想いで結婚したのだから
自分達は大丈夫だという確信から
あたしの好意に甘えきって
どんどん図に乗る夫。

夫の気付かないままに
二人の間の溝はどんどん深まっていった。

話し合いを重ねて
改善を求めても
続くのは3日だけ。
その繰り返しに疲れていつしか諦めるようになってた。

男性である夫とあたしの体力は違う。
それまで、頭脳労働についていたあたしにとって
急にはじまった肉体労働に疲れきって
朝になるまで眠らない夫とは
一緒にベッドに入る事がなくなり
さらに身体の繋がりはなくなってた。

夫は眠くなるぎりぎりまで起きているタイプで
仕事が終わり家に着いたらずっとパソコンに向かって
あたしが眠くなって寝ようよって声を掛けても
いつまでたっても眠ろうとしなくて
それは結婚当時から、いつものケンカの種だった。

最初はそれでもねばって一緒に寝れるように待ってた。
でも、その度にケンカになり
結局はセックスもせずに眠る事への悪循環に気付いて
話し合いを何度も続け、それでも改善がない事に諦めて
いつからか一人で先に寝るようになった。

夕方から始まる仕事はますます彼を夜型にして
あたしが目覚めると彼はまだ寝ていない事がよくあった。
パソコンルームを覗くと
まだパソコンをしている。
すれ違いの生活に心が冷え始めていた。

ある時、意を決して話し合いをした。
セックスレスだって事
気付いてないかもしれないけど
今あたしたちは夫婦の危機にあるんだって事。
コミュニケーションとしてセックスは大事だよ
ちゃんとしようよって真剣に話し合った翌日だった。
目覚めるとまた彼は隣に居ない。

パソコンルームを開けると
そこにはAVを見ながら一人でしている彼の姿。

情けなかった。
どんなに問題があっても
男と女として機能してたら
きっと乗り越えられてたと思う。
女としてのプライドは崩れ去り
あたしは泣きながら懇願した。

どうして?あたしの何がダメなの?
一人でしたい時のためにって
あたしがオナニーする姿までビデオで撮らせて
どんなプレイもどんなに恥ずかしい事も
痛い事もなにもかもを受け入れてきたのに
どうして一緒に眠らないの?
どうしてあたしとセックスしないの?
なんであたしのここに入れてくれないの?

あたしとしていて、それでもしてたなら
「もぉ、ホント好きだねぇっ」て笑い話だったのに。

泣きながら土下座した。
お願いだからあたしに入れてくださいって。

そんなにもあたしを傷つけられて
女としてのプライドを打ち砕かれて
どうしようもなく惨めな土下座をした。
そんな気持ちも泣きながら訴えた。
それなのに数日後、目が覚めたらやっぱり彼は隣に居なくて
ドアを開けたら、彼は同じように一人でしてた。

もう、何もかもが崩れた。
あたしの夫への想いは
その瞬間に消えて無くなった。

どんなに謝られても修正を試みても
どうしても気持ちは戻る事は無かった。

関係を修復する方法の糸口さえ見えなかった。
家族を捨ててまで結婚したという事実が
負い目のあるあたしにとっては
想い入れとなり
夫にとってはそこまでして結婚したから
大丈夫だという慢心へと繋がった。

関係を良くして行こうという気持ちのない
彼にどうしたら解ってもらえるのか
溝を埋めていいのか
もう、わからなくなっていた。

夫に裏切られた気持ちで
当時アメリカで生きていく手段を持たないあたしにとって
夫と別れるためには乗り換え先が必要だった。

浮気した。
乗り換え先として
手身近な趣味の合う男と不倫関係になり、
その事が夫に発覚し
あたしたちの関係はもう
修復不可能な所へと進んでた。

それでも、適当に選んだ男と
うまくいくわけもなく
不倫相手と別れ
夫ともう一度修復を試みた。

夫も安心しきって甘えきっていた関係を振り返り
危機感を持って修復しようとしたものの
お互いに裏切られた気持ちはもう修復しようがなかった。

努力は空回りし
相手のことが見えなくなっていった。

続く

体の記憶 11

女を駆使して生きてきた。
あたしの唯一絶対の武器でもあり
弱点でもあった。
良くも悪くもあたしは女で
そのあたしが女ではなくなっていた。
貞操観念という価値観で
捻じ曲げた結果
あたしらしささえも失っていた。

自分を失うか夫を失うか
答えは出てた。
自分を失う事は出来無い。
死を傍らに置いて生きてきた。
ぎりぎりの生にしがみついてここまで来たのに
自分を失うなんて死も同然だ。

あたしは女に戻る為に
夫と別れ、一人になった。

あばずれのあたしが貞淑な妻になろうだなんて
到底無理な事だったのかもしれない。

貞操観念と”女”である事は共生出来無い事を知った。
あたしはそういう種類の女なのだ。
ずるくて弱くて一人では生きていけない。
だから男はほっておけない。
そういう風に出来ている。
それがあたしなのだと思う。

あたしは、女としてしか生きる事はできない。

クラブに行くのが好きだ。
鏡を見るようなものだと思う。
フェロモンが出ているかどうか。

そういう場では男は女に美しいから声を掛けるんじゃない。
やれそう、あるいはやりたいと思うから声を掛ける。
そういう場所だから確認できるものがある。

貞淑な妻をしていた間、あたしは人生で
こんなにもモテなかった時期は無いほどモテなかった。
決して老けていたわけでも醜かったわけではないけど。

フロアに出れば男があたしを取り囲む
そんな当たり前の光景に
あたしは久しぶりに自分の女が戻ってきている事を実感する

別れた後、何人かの男と出会い、関係を持った。
でも、結局あたしは一人だ。

もう、誰かに依存したりせずに生きていける。

あたしは自分で居る事を選んだ。

あたしの人生の付属品に男は必要不可欠だけど男の付属品のような人生はあたしには生きれない。

体の記憶はあたしに生き方を照らしてくれる。
あたしをこうして今現在へ連れて来てくれたのは
あたしの体。
この体で生きていく。
そしてこの体と生きていく。

人は生まれてただ死ぬだけ。
その間に起こる全ての事を体に刻みつけ
一人でいつか死ぬのだ。

あたしは自分自身でここへ来て
ここから進んでいく。

人生にはどんな酷い事も起こりえる。
つまり、どんな素敵な事も起こりえるという事。

あたしはこの先、どんなに酷い事が起きても
きっともう死を希望に生きたりはしない。
生きる事に素敵な希望を見出してるから。

ひどい人生だったと思って死んだりしない。
素敵な人生だったと笑って死ぬ。

だから、あたしは負けたりしない。
幸せに向かって全身全霊で生きる。
どんな犠牲を払ってでも
自分である事、あたしを幸せにする事を
投げたら、死んでいるのと同じ事だ。

不幸な日が人生にたくさんあったとしても
その倍幸せな日を送れたら
あたしの人生はきっと幸せだったと笑えるから。
今日を幸せに生きる。
そして明日を幸せに笑う。
その先に幸せな未来は必ずある。
どんなに素敵な事も起こりえるのだから。